入選
《鳥取県琴浦町立東伯中学校》1年 岡本 あおい
感謝を忘れずに
私は映画が好きだ。ときどき、母と映画館に行くことが私の楽しみになっている。入場口でスタッフの方へチケットを渡すと、「何かお手伝いすることはありますか。」と聞いてくださる。私には、先天性の障がいがあり、長い距離を歩行することが困難だ。そのため、外出するときは車椅子を使用して移動する。車椅子の私を見て、声をかけてくださったのだ。
毎回、違うスタッフの方に出会うのだが、どの方もすごく自然に、笑顔で声をかけてくださる。私は、平らなところは自力で車椅子をこげるが、スロープのところから席までは母が、車椅子を押してくれるので、
「ありがとうございます。大丈夫です。」と、返事をするのだが、答える私も笑顔になる。
たった一言、二言の会話だが、すごく嬉しくて、大好きな映画もより一層楽しく鑑賞できる気がする。母から聞いたのだが、車椅子席を予約するため、母が事前に映画館へ出向いたときも、同じように声をかけてくださるそうだ。二人で、「ありがたいね」と感謝して映画を楽しんでいる。
なんで嬉しく思うのか、考えてみた。車椅子の私を見て、「手伝いますよ」と一方的に言われるのではなく、何が困っているのか聞いてくれたり、私ができることは見守ってくれたりしている。親切を押しつけない優しさや、困ったときにきっと助けてくれるだろうという安心感があるから、私は嬉しいのだと分かった。私も誰かの力になりたいときは、こうやって接していきたいと思った。
今年の夏休みに、初めてボランティアに参加する機会をいただいた。私は、マグネットを作成するコーナーを担当した。マグネットの作り方をお客さんに説明し、それぞれの作業を見守っていた。お客さんの中には、小さな子もいて、ボンドをぬる作業をしていたが、ぬるのが難しそうに見えた。
しばらく様子を見ていたが、作業が進んでいなかったので、声をかけるかどうか悩んでいた。でも、勇気を出して、私がしてもらっていたように、目を合わせて、笑顔でなるべくていねいに、
「何か手伝おうか?」と声をかけてみた。
すると、その子は、こくん、とうなずいて、私に作りかけのマグネットとボンドを渡してくれた。おそらく、初めて会う私に声をかけられて、とてもびっくりしただろうが、
「少しは安心してくれたのかな。私に任せてもいいと思ってくれたのかな。」と感じた。
夏休みのボランティアで、いつもの私とは反対の立場で誰かの役に立つ、貴重な体験をすることができた。
さりげなく言うのには、まだまだ時間はかかるかもしれないが、もし、またチャンスがあれば、私がみんなにしてもらっているような優しい親切を、恩返ししていきたいと思っている。


