優良賞
《聞くことで伝わる小さな親切》
鳥取大学附属中学校 2年 寺岡 優希
ぼくの祖父母は大阪に住んでいる。鳥取に住んでいるぼくが祖父母と会うのは年末年始、ゴールデンウィーク、お盆休みくらい。
大阪にはテーマパークや遊園地、水族館など鳥取にないものがたくさんあって、祖父母に会いに行ったついでに、ときどき遊びに行く。最初は祖父母も一緒に出かけていたけれど、だんだん家族だけで出かけるようになった。祖父母と過ごすのは、大阪に行った日と帰る日くらい。そして、ぼくはいつの間にか大阪に行く目的が、祖父母に会うことより遊びに行くことになっていた。
今年のゴールデンウィークに大阪に行ったとき、祖父は自宅にいなかった。数日前に入院したらしい。
「今回は万博に行くって楽しみにしていたから、入院のことは言えなかったの。おじいちゃんのことは心配しないで楽しんできて。」
と祖母は言った。母だけが帰る前にお見舞いに行った。ぼくは、お盆休みにはいつものように会えるだろうと思いながら、鳥取に帰ってきた。ところが祖父は退院して、またすぐに入院した。祖母が母に電話をかけてくる機会も増えた。
夏休みに入る前、ぼくは母に相談された。
「お盆休みも大阪に行くけれど、どこにも遊びに行けなくてもいいかな。おばあちゃんがひとりで寂しそうなので、おばあちゃんの希望を聞いて過ごすことになってもいいかな。」
この夏は猛暑で、どこに行くのも大変だなと思っていたので、ぼくは「いいよ」と返事をした。それから祖母に聞いた希望は簡単なものだった。
「話を聞いてほしい。買い物に行きたい。」
大阪に着いてから、まず家族と祖母で祖父のお見舞いに行った。祖母が電車とバスを乗り継いで1時間以上かけて行く病院が、車だと20分だった。次の日は、車でホームセンターやスーパーに買い物に行った。部屋の片付けを手伝った。祖母の得意なナンプレもした。いっしょにボードゲームをした。ぼくがいつも楽しみにしているたこ焼きパーティーもした。ぼくにとっては日常の延長のような3日間だったけれど、祖母は、
「いろんなことがあり過ぎて、頭の中がいっぱいだ。」
と、嬉しそうに話していた。
高齢者は、孤独感や存在意義への不安、人生の振り返りといった心理的な背景から、「話を聞いてもらうだけで嬉しい」と感じる傾向が強くなる、と聞いたことがある。
祖母は多趣味で、友達もたくさんいて、毎日忙しくしているので、当てはまらないと思っていた。けれど、家族が近くにいないことで寂しさを感じているのかな、と思うようになった。
離れて暮らしていても、電話で話を聞くことくらいはできる。これからは祖母との会話を楽しもうと思う。


