第47回 作文コンクール入賞作品
第47回 作文コンクール入賞作品

入選

《鳥取県境港市立第三中学校2年》
妹尾 光莉「帰り道でのこと」

 所属しているソフトテニス部の練習後、私は晴れやかな気持ちで自転車をこいでいた。いつも通る道だが、車がギリギリ通れるくらいの横幅で、通行中に車が来ると止まって端に避けなければならないという面倒くさい道だった。
 おまけになかなか長い道で、車が来ると「またか」と残念な気持ちになった。そんな面倒な道をあと数メートルで通り抜けようとしたとき、前方から2台の自転車が横並びで向かってきた。私は近くの家の庭に入らせてもらい、2台の自転車を先に通した。
 さあ帰ろうと後ろを確認したとき、今度は車がやってきた。私は苛立ちながらそこにとどまり、(さっさと行ってくれ。)と心の中で願った。そのとき、車が私の横で止まった。不思議に思っていると、車の中から中年くらいの男性が顔を出し、
 「ありがとう。」
と唐突に声をかけてきた。私は驚いて、
 「あっ、はい。」
と間抜けな対応をしてしまった。私が呆然としていると、車は何ごともなかったかのように去っていった。
 私は、狭い道を通るとき、いつも車を邪険に思っていた。その理由は、急いでいるのに車が来ることで遅れることや、季節によって待つときに寒かったり暑かったりして体がおかしくなりそうだからだ。ただの八つ当たりだとわかっているが、早く行くために自転車を使っているのに、何のための自転車だと腹立たしく感じてしまうから仕方がない。
 そんないやなイメージを持っていた私だが、運転手の男性からのお礼の言葉をもらってから、変化があった。車に対して、あまり邪険に思わなくなったのだ。急いでいるときなどは、いやだなと思うこともあるが、私が端に寄り、車が過ぎるのを待っているときに(私のことをどう思っているのだろう。)と、運転手側の気持ちに好奇心を持つようになった。
 そして、私の行動に対して、ありがたいと思ってくれたあの男性の運転手さんへの感謝の気持ちも芽生えてきた。この偶然のできごとがなければ、運転手側の気持ちを知ることもなく、邪険に思ったままだっただろう。
 ちょっとした人との関わりの中であっても、感謝をしてくれる人がいることを知った。周りの人は、自分以外のことに関して無関心なのだと思っていたが、違うのだと気づかされた。
 これから、私は相手の気持ちを考えつつその行動を見てみようと思う。周りの人たちは何を考え、誰のために動いているのかを。自分がしたちょっとした行動が相手に伝わり、行動として返ってくると、とてもうれしい気持ちになる。
 人の行動の中に、私のためを思ってしてくれていることがあるのかもしれないと考えて、いやなことや逃げたくなることがあっても、こんなふうに物ごとを前向きにとらえて考えて生きていきたいと思う。

 

このページのトップへ