第46回 作文コンクール入賞作品
第46回 作文コンクール入賞作品

入選

《鳥取県》鳥取市立南中学校1年 山根 唯夢
『「コップンカップ」の表し方』

 僕は、父の仕事の関係で小学3年生から3年間、タイのバンコクに住んでいました。タイに行く前は、タイでの人身売買などのうわさを聞き、怖い国という印象を持っていました。
 また、僕は日本人学校に通う予定で、住むマンションも日本人ばかりだと聞いていたので、タイ人とはあまり交流することなく生活をすると思っていました。しかし、実際のバンコクでの生活 は、多くのタイの人と出会い、その人々のおかげで、安全で楽しく送る事ができました。
 仏教国であるタイでは、子どもをとても大切にしてくれます。僕や弟が電車に乗ると、必ず席を譲ってくれました。マーケットで買い物をするときも、
 「ロッダイマイカップ(まけてください)。」
と言えば、たくさんサービスをしてくれました。マンションでは、タイ人のスタッフが、いつも優しく声をかけてくれて、いっしょに遊んでくれたり、果物などをごちそうしてくれたりしました。 日本人学校では、現地校との交流会があり、タイの文化について教えてもらったりしました。
 僕がタイに住んでいたときに、タイには7万人以上の日本人が住んでいて、その日本人のために、多くのタイの人が働いていました。僕の家でも、タイ人のドライバーを雇っていて、学校の送迎などをお願いしていました。
 そんな生活の中で、父はよく僕に、
 「タイに住んでいるのではなく、タイに住まわせてもらっていると思うよう心がけなさい。タイの人が働いてくれていることを 当たり前と思わず、感謝の気持ちを大切にし、あいさつを忘れないように。」と、言っていました。
 感謝の気持ちをどのように表せばいいか、僕はいつも考えていました。「コップンカップ(ありがとう)」という言葉は、いつ も言っていました。父や母が、いつもチップを多めに渡しているのも見ていました。でも 僕は、それだけでいいのかとも思っていました。
 そんなとき、父の同僚の方が、タイの人に感謝の気持ちを表すために、タイの道路の清掃活動をしませんかと誘ってくれました。タイの人は、ごみの分別をする習慣がなく、道ばたにごみを捨てる人も多いので、あまり道路はきれいではありませんでした。
 そこで早朝、父の同僚や家族の有志で集まり、清掃活動を定期的に始めました。一年中暑いバンコクなので、大変なこともありましたが、僕はタイの人への感謝を込めて、積極的に参加しました。
 この活動を、タイの人に伝えたことはありません。タイの人がこのことを聞いて、喜んでくれるかもわかりません。僕たちのた だ、一方的な気持ちです。でも、小学生だった僕にとっては、タイに住まわせてもらった感謝を表す一番の方法でした。
 これで終わりにせず、もっといい方法で感謝を表すことができるよう、これからも考えていきたいです。

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