第46回 作文コンクール入賞作品
第46回 作文コンクール入賞作品

「小さな親切」運動本部賞

《鳥取県》米子市立福生中学校3年 大倉 優衣
『世界を包みこむ優しさ』

 「いやだ、今から日本を離れるなんて、期限があっても絶対にいやだ。」
 何回もそう言いながら、とうとう渡米の日が来てしまった。そのときの私の心は不安と悲しみであふれていた。日本で、住ん でいたところで、とても楽しい生活を送っていたぶん、異国の地で暮らすことが怖かった。
 アメリカでの生活にまだ十分に慣れないうちに学校生活が始まった。初日に教室に入ると、たくさんの人が、「ハイ !」 と、笑顔で声をかけてくれて、ちょっと緊張がほどけた気がした。また、英語が上手く話せないにもかかわらず、学校案内をしてくれたり、パソコンの使い方もおしえてくれた。
 私が一番印象に残っているクラスが、「ESOL(イーソル)」というクラスだ。これは、英語が第一言語でない国の人々が、英語能力が十分になるまでいっしょに活動するクラスである。 そこには、中国や韓国、メキシコ、ウズベキスタンなど、さまざまな国から来た人がいた。みんな簡単な英語で話しかけてきてくれ、感謝してもしきれないくらい助けてもらった。言葉でうまくやりとりできなくても、助けよう、安心させてあげよう、という思いは十分に伝わる、と身に染みた。なんだか温かくて、強い絆で結びついているような空間だった。
 そして、滞在をしてから一年弱がたとうとしていたとき、中国から新しく同じ歳の女の子がやってきた。私は、今まで助けられてきたのだから、やることは一つしかない、と思った。すぐに 、彼女に名前を聞いた。すると、まだ慣れない様子で私に答えてくれた。私は、彼女が安心して生活できるようにしよう、と心に決めた。
 それから、私は彼女とできる限りたくさん話して、日本のことも含め、いろいろなことを教えた。時々遊んだりもした。私の誕生日にもらったイラストつきのカードに 書かれた 、感謝の言葉 を読んだ ときは、ああ、行動を起こしたからこ そ 読めた言葉だな、と心が熱くなった。
 日本に帰ってきた今、感じることは、渡米する前とは真逆である。もちろん、何回もつらい、日本に帰りたいと思ったことはあった。しかし、それ以上に学んだことが多くある。もう一度、いや、何度でもアメリカに行って、そこでしか感じられない雰囲気を味わってみたい。これはアメリカだけじゃなく、世界共通だと思う。そう思えるのは、世界にはたくさんの優しい心を持つ人がいて、自分の心まで温かくしてくれることに気づけたからだろう。アメリカで過ごすことができて、このようなことに気づけたことに本当に 感謝している。そして、出会いを大切にしたいと、中国から来た子を始め、交流を続けるようにしている。
 世界に優しさを伝えるために、完璧な言葉はいらない。行動や思いは、言葉以上に心を動かすことができるのだから。

 

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