第43回 作文コンクール入賞作品
第43回 作文コンクール入賞作品

入選

《鳥取県》鳥取大学附属中学校3年 鈴木 小晴
『小さな親切』

小さな親切 「人に親切にされたときと、人に対して親切にできたときとでは、どちらがうれしい?」
もしこんな質問をされたら、以前の私は、
 「人に親切にしてもらったときの方がうれしい。」
と答えたと思います。でも今は迷わず、
 「親切にできたとき!喜んでもらえたとき!」
と答えます。
 夏休みの部活後、母の迎えを待っているとき、フランス人の旅行者に道を聞かれました。私は、地図を見ながら、その温泉施設へ行く道を教えてあげました。でも、緊張していて上手に説明できませんでした。それでもその方は、とてもすてきな笑顔でお礼を言ってくれました。私はとてもうれしい気持ちで、迎えにきた母にその話をしました。しばらくして母が、
 「その施設は確か今、休館中じゃない?」
と言うので、母の携帯で急いでホームページを見てみると、やはり休館中と出ていました。私は、悪いことをしてしまったと思いました。私が行くようにすすめたわけではなく、聞かれて道を説明しただけだったのですが、何だか昔からの友達にうそをついてしまったような気持ちになり、母に引き返すように頼みました。戻ってみると、彼らはその施設の前で立ち止まり、地図を見ていました。私が近づくと、
 「クローズ・・・。」
と苦笑いしていました。さらに聞いてみると、彼らは鳥取市内に宿泊していて、その日の夕方まで浜村温泉に入ったり、観光したりしようと思っていたようでした。私は思いきって、私の家の近くの鹿野温泉に来てはどうかと尋ねてみました。すると彼らはとても喜んで、ぜひ行ってみたいとのことだったので、母の車に乗ってもらい、温泉施設に案内しました。
車内では自己紹介や、帰りのバスのこと、昼食のおすすめのお店などを話しました。案内し終わったとき、私は何だか飛びはねたいような、うれしく明るい気持ちでした。今までこんなふうに、知らない人に対して積極的に行動したことはありませんでしたが、少しでも楽しい旅になるように役に立ちたい、という思いからの行動でした。私のへたな英語でも感謝してくれました。そして何度も、
 「アリガトウ、アリガトウ。」
と言って、すてきな笑顔を向けてくれたことが、本当にうれしかったです。
 「マイネーム イズ、コハル。」
車の中でそう自己紹介しました。遠い外国で、鳥取のこと、私のことを思い出してくれることがあるかな?そんなことを思い、今でも心が温かくなります。

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